海の話、続き
前回の予告どおり、海の話の続きです。ただ、4日も遅れてしまいました。スミマセン。
・・・・・・それから確か1ヶ月くらい経った月曜日のことだったと思う。いつものように仕事を終え、教室を出て、帰ろうとして自分のスクーターを見て、ぎょっとした。
スクーターの前カゴいっぱいに真っ赤な薔薇の花束。控えめに見ても50本は下らないだろう。こんなに大きな薔薇の花束を見たのは初めてだった。
何、これは?タチの悪いいたずら?もしかしたら花の中に爆弾が仕掛けられているんじゃないかしら・・・・・・わたしはスクーターに近づくこともできず、その場に立ち尽くしてしまった。
と、すぐ先の駐車場から一人の男性がこちらに歩いてきた。見ると、見覚えのあるワーゲンが駐車場に停まっている。
彼は、初めて会ったときと同じようにニコニコしながら近づいてきた。わたしはようやく薔薇の花束の意味がわかった。爆弾が仕掛けられていないとわかって少しホッとしながらも、少々複雑な気持ちになった。どうしてここがわかったんだろう?ああ、そうか、「○○や」に勤めているなんて言ったから・・・あ、でもそれだけでは、「○○や」の音楽教室はたくさんあるのだもの、こことはわからないはず。・・・等々と彼がそばまで来る数秒の間にあれこれ考えた。
このあと、彼のワーゲンで夜の海を見に行ったのだが、助手席に座ったわたしはさっそくきいてみた。「どうしてここだとわかったのですか?」彼は快く答えてくれたが、それによると、○○やに電話してわたしのことを聞き出したらしい。○○やの店員もよく教えてくれたものだと、わたしは少し唖然とした。彼はその前の週にも来たらしいが、正確な時間を聞いていなかったため時間が合わず、会えなかったそうだ。それで、もう一度電話して時間を確認して、出直してきたらしい。
1時間ほどして、もう夜も遅かったので、スクーターを停めてある教室の前まで送ってもらい、そこで別れた。
帰って下宿先の人に、いつもより1時間帰宅が遅くなった理由を話して花束を見せた。以来、その人は冷やかし半分に彼のことを「薔薇の君」と呼んだ。
彼とはその後も数回会ったが、結局、彼がわたしのことを結婚相手として望んでいることがわかったので、交際をお断りした。わたしはピアノの仕事をライフワークと考えていたので、彼には申し訳ないがライフスタイルが合わないと思ったからだ。
その後、彼とは連絡が途絶えてしまったが、それから何年も経った今でも時折彼のことを思い出す。幸せでいるのだろうかと。本当に短い間だったけれど、彼との触れ合いはわたしの中に爽やかな印象を残した。
静岡で家族を暮らす、海が好きで素朴でロマンティックな紳士だった。
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